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茶の間の暮らしを現代的な家具で

男の椅子とだ円テーブル

食堂を中心に少ない家具でシンプルに暮らす――。
モノ・モノでは、もう40年以上そんな提案を続けています。
キーワードは“一机多用”。ダイニングテーブルを食事だけではなく、 くつろぎのスペースとしてに活用できれば、大きなソファが不要になり、 限られた空間をすっきり、広々と使うことができます。

一机多用に適したテーブルの高さは61cmがベスト。 標準的なダイニングテーブルより約10cmほど低いサイズです。 それにあわせる椅子は、座面が思いっきり広くて 高さはやや低め(座面高36〜38cm)のほうが気分がいい。 なぜなら靴を脱ぎ、器を手に持って食事するのが日本人だから―。

デザイナーの秋岡芳夫が提唱する、日本人の身体と暮らしに合わせた家具を モノ・モノでは「低座の椅子」シリーズという名称で販売してます。

親子の椅子

靴を脱いで暮らす
日本人に適した椅子とは

家で使う椅子は、街で腰掛けている椅子と同じでいいのでしょうか。違うところが3つないといけないのでは……。

違いの一番目は、座面高。家で使う椅子の座面高は、玄関に脱ぎすてた靴の踵(かかと)の高さぶん、街の椅子より低くないといけません。

千人か万人に一人の割で、わが家に帰ってからも、ベッドインするまで靴を履きつづけている変な日本人もいるらしいけれど、なみの日本人なら、やれ今日の仕事も終ったぞ、やっとわが家に帰ったんだと、素足の感覚でも実感したくて、玄関で靴を脱ぎます。そして居間で靴下も脱ぐのです。靴を脱ぐと、わが脚は街を歩いていた時より短かくなります。靴の踵ぶんだけ短かくなったその脚で腰掛ける椅子の座は、街の椅子より低くないと困るはずです。

違いの二番目は、性別。街の椅子の座の高さは男寸法でいいのです。座の高い椅子にも女は快適に腰掛けられます。脛(すね)をハイヒールで男なみに長くしていますから。バスのシートの高さも喫茶店の椅子も劇場のシートも、街の椅子は男むきの高い座でいいのです。

けれど、いったん家に帰り、玄関でハイヒールを脱ぐと、彼女たちの脛(すね)の長さは、そうなんです、生まれながらの長さに縮んでしまいます。部屋で、殿中松の廊下の浅野内匠頭のようにスラックスを引きずって歩くのが嫌で、女たちは玄関でハイヒールを脱いだあとスラックスの裾をたくしあげるのです。

靴を脱いで、生まれながらの脚にたちかえった彼女たちは、街の椅子よりも、脱いだ靴のヒールぶんだけ座の低い椅子が必要になります。外国では全く必要のない女の椅子が、素足ぐらしの日本では絶対必要なのです。

ある日ある時そう気づいたわたしは、女房の椅子の脚を、鋸(のこぎり)を持ち出してゴシゴシ、彼女の脚に合わせて切り始めました。女の椅子に改造するために……。脚を切りつめる前の椅子は、男のわたしには結構な掛心地の椅子でした。座面高は43センチでした。その脚を、わたしより20センチ低い、身長152センチの彼女に合わせて、5センチ切りつめました。

5センチ切りつめたとたんに椅子は、めっきり女の椅子らしくなりました。見違えるほど掛心地がよくなったわと喜ぶ彼女に、ちょっと貴方もといわれて試しに腰掛けてみてびっくり、なぜなのでしょう、男のわたしが座ってもしっくりなのです。

女寸法の座の椅子に、なぜ男が座ってしっくりなのでしょう。男寸法の座の椅子に、丈の低い女が腰掛けたら、踵(かかと)が浮きます。なのに、なぜ男は女の椅子に坐れるのでしょう。大は小を兼ねるといいますが、椅子の座だけは例外で、低が高を兼ねると初めて判って、大発見でした。(以下略)

出典:秋岡芳夫『いいもの ほしいもの』(新潮社・1984年)より抜粋

秋岡芳夫©森茂宏

秋岡芳夫(あきおか・よしお)

工業デザイナー、木工愛好家、著述家、教育者

1920年熊本県宇城市生まれ。東京高等工芸学校卒業。デザイン事務所KAK設立を経て、1970年にグループモノ・モノを結成。工業化社会にいち早く警告を発し、“立ち止まったデザイナー”を名乗る。消費者から愛用者へ、工作人間、裏作工芸といった持論を展開し、生活技術の回復を訴えた。東北工業大学工学部教授、共立女子大学生活美術学科教授を歴任。1997年没。

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