

美しい竹とんぼの写真とともに、工作の大切さを説いた名著
秋岡芳夫は、生涯にわたり数千機ともいわれる竹とんぼを製作しました。本書には飛行機のプロペラのよう美しい造形の“スーパー竹とんぼ”の作品写真が数多く収められています。内容は竹とんぼの歴史、飛行の科学、作り方や道具紹介が中心ですが、見所は最終章の「手が考えて作る」という随筆集。晩年の秋岡芳夫の考えが端的にまとめられていて、竹とんぼ作りに興味がない人にとってもヒントの多い1冊となるはず。1986年に講談社ブルーバックスから刊行された書籍を、復刊ドットコムが判型を変えて復刻したものです。
プロローグ
この5年間(1980~1985)にぼくは、正確に教えたわけではないが竹とんぼを、ほぼ800機削りあげた。
「千人斬り」ふうの悲願で削ったつもりはない。ただ「面白くて止められなくて」削りあげた。一九八五年十二月現在、まだ面白くて創りつづけているぼくだ。
手で考えながら創った。
そうしたら、右利きの人間が飛ばす竹とんぼは、なぜか右カーブしながら水平飛行する。といった発見や、右利きのぼくの場合、左の手のほうが右の手よりも器用に仕事する。といった左手の見直しがあった。ぼくの手は竹とんぼを精密な図面で、こう作れああ作れと指図されるのを終始嫌い続けた。デザイナーに、器のフォルムや色彩をこまごまと指図されたときの陶工のように、渋い顔をした。
ぼくの手は自由に工作したがった。
「もう一機、いま作ったのと同じのを」と命じるぼくの手は作るものを渋った。「同じのなら機械にやらせなよ」と不貞腐れて拒んだので、だからこの五年間の800機は全部、違う形・異なる性能のとんぼになった。
ぼくは、手の働きを見直した。
手は反復作業に使うな。
手はその工作能力・考察力を活かして、創作に使え、と。
左手の働きにも注目した。
竹とんぼを削っているとき、右手に、そうだそこだ、そこをもっと削れ!とか、ストップ、削るのは中止とか、作業命令を出していたのは左の手だった。
翼の微妙な厚みや、左右の翼のあるかなしかの重さの違いを測っていたのも、注意してみたら、左の手だった。
右利きは左利き」なのかもしれない。
ぼくの右手はパワーで、左手はセンサー。その右と左がみごとに連動する。
目次
竹とんぼの作品いろいろ
竹とんぼのルーツをたどる
発想工房
ぼくが考えた「竹とんぼの科学」
竹とんぼができるまで
手が考える
- 著者
- 秋岡芳夫
- 発行元
- 復刊ドットコム
- サイズ・ページ数
- B6判・257ページ
- 発行年
- 2011年11月1日
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