木工芸の人間国宝も認める、手工具解説の名著
家具職人で東京府立工芸学校(現・東京都立工芸高等学校)の教授だった吉見誠さんの経験に基づいた、道具の仕立てや使い方などが詳細に記されています。表紙カバーの帯のキャッチコピーは、木工芸の人間国宝、須田賢司さんによるもの。2017年12月に松本市で開催された木工作家向けの講習会「木工書籍で知る世界の木工文化」(信州木工会主催)で、須田さんが本書を強く推奨されたことが40年ぶりの復刊につながったそうです。
原著は1935年に発行され、長らく絶版となっていました。1980年に工業デザイナー・秋岡芳夫の監修で復刻され、12刷まで重版されるなど根強い人気がありました。今回、創元社から発売された本書は13刷に当たり、出版社11社からなる「書物復権」プロジェクトにより、久々に重版されました。この機会にぜひお求めください。
プロローグ
原著『木工具・使用法』は木工具の性能と種類が日本木工工具史の中で一番進歩してきた昭和10年に編まれている。当時は幕末の文化文政期に次いで日本木工技術が華やかに咲きほこっていた時代であった。
建物・家具・什器のほとんどが木造木製の時代で、そんな時代背景をふまえて原著者は建具・洋家具・指物用の木工具を中心に、大工用・小細工用・彫刻用の道具を網羅してその原理・構造・使用法・手入法を詳述している。
著者が序文中でも書いているように当時広くニーズのあった本でもあったにもかかわらず、当時類書は全くなく、明治にも徳川時代にもこうした木工具の使用法について書かれた本は見当たらない。原書からほぼ50年(2020年時点では90年)を経た現在においても類書は皆無だ。復刻を企てた理由がここにある。
復刻に当って私は、木工具の名称は原著のままとした。ほとんどすべての道具名が現在でも通用するからだ。ただ読みづらい道具名にはルビを補った。言葉づかいは当用漢字を使って現代文に改めた。より多くの人に読んでもらいたいと思ったからである。
原書の一部を省くことはさし控えた。昭和一桁代の産業事情を偲ぶ、大切な資料だと考えたからである。
図版は一部のものを拡大し、書き入れの文字を活字に置換えた。写真を挿入することで図版の助けとしたかった。原書には写真が入っていない。写した道具は私の木工具コレクションの中から原著に登場するものを中心に選んだ。叶うことなら図版に出ている道具をすべて写真でと思ったが不可能だった。間に合ったのは全体の7割に過ぎなかった。昭和10年からすでに50年近い月日が流れている。この間に失われた木工具は数知れない。
逆にこうも言える。50年も前の木工具の7割がまだ使い続けられたり保存されたりしていたと。
原著者の吉見誠先生は当時府立工芸学校の教授であった。先生、いまの人達に読まれることを期待して文体を改め写真を挿入しましたが、どうかお許し下さい。他意はありませんので。
東北工業大学にて 秋岡芳夫
目次
第1編 工作台
第2編 尺度と定規
第3編墨芯と墨壺
第4編 鋸
第5編 鉋
第6編 罫引と白罫引
第7編 鑿と小刀
第8編 槌類
第9編 錐
第10編 砥石類
第11編 斧類
第12編 雑類
詳細な目次やページ見本をモノ・モノ(当サイト運営会社)のウェブサイトで公開しています。
- 著者
- 吉見誠
- 監修
- 秋岡芳夫
- 発行元
- 創元社
- サイズ・ページ数
- B5判(257mm×182mm)・184ページ
- 発行年
- 2020年5月20日 第1版第13刷発行
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