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2026.11.06 子どもと椅子の話

インタビュー:神成美輝さんに聞く、子どものやる気を引き出す環境の整え方

『保育園児のためのおうちモンテッソーリ』などの著書でも知られる育児アドバイザーの神成美輝さんは、夫とともに4年生、6年生(取材時)のふたりの息子を育てる母親でもあります。教育現場の環境を整えることで、子どものなかにある自主性を引き出すというモンテッソーリの理念を、子どもたちが幼い頃から家庭でも応用してきました。実践の現場であるご自宅におじゃまして、日々の暮らしのなかで続けている工夫や心がけていることなどをうかがいました。(文・佐野由佳、写真・吉崎貴幸)

子育てが楽になる 生活の習慣化とは?

東京都内の閑静な住宅街のなかに、神成さん家族が暮らすマンションがあります。三方向に開口部のある、明るいリビングダイニングキッチンが生活の中心です。近くの小学校に通う息子たちが、学校から帰ってきて勉強するのも遊ぶのも、個室ではなくこのLDK。長男は部屋の奥にある学習机で、次男はダイニングテーブルで、毎日それぞれ決まった時間に勉強しています。

神成さんは、子どもたちの成長に合わせて、生活環境を整えるために4つのポイントを重視してきました。

  1. 生活をルーティン化する
  2. ものの配置を決める
  3. 整える場所は4カ所――玄関、洗面所、子どもの作業スペース、おもちゃ収納
  4. 子どもの発達段階に合った道具を使う

具体的にはどのようなことを実践されてきたのでしょうか?

神成 美輝(かんなり・みき)
お話をうかがった人
神成 美輝(かんなり・みき)

モンテッソーリ育児アドバイザー。1978年生まれ。幼稚園、病児保育室勤務を経て、たまたま次に就職した保育園でモンテッソーリ教育に出会う。「先生方が静かに見守るなかで、子どもたちが目をキラキラさせてやりたいことに集中している姿に感動」し、11年勤務しながら2012年モンテッソーリ教師資格を取得。ふたりの息子を育てるときに近所にモンテッソーリ園がなかったため、自宅でもできる「おうちモンテッソーリ」を実践。現在は専門家として保護者に寄り添う育児アドバイスを行っている。著書に『モンテッソーリ流「自分でできる子」の育て方』(日本実業出版)など。

生活をルーティン(習慣)化する

――生活をルーティン化することは、子どもの環境づくりにとってどのようなよい点がありますか? 

朝起きる時間、夜寝る時間、ご飯を食べる時間を決めて守る――基本的なことですが、毎日の生活をきちんと整えるだけで、子どもの心が落ち着くんですね。それを続けていくと、毎日同じなかにも発見があって、「もっとこうしたい」「これをやりたい」という自発的なやる気が育つんです。そのために、ルーティン化することはとても大事だと思います。

――とはいえ、毎日同じ時間に寝ることひとつ取っても、そこに持っていくのはなかなか難しいこともあります。どのようにうながしていけばいいのでしょうか?

予定が分かる年齢の子であれば、1日の流れを紙に書いてあげるといいと思います。時計を見て、「いまは何をする時間なんだな」と気づけるようにする。まだ小さい子なら、親が「いま10時だね。10のところに針が来ているよね。じゃあ何をする時間かな?」と声をかけるのがいいと思います。わが家では、スマートスピーカーなどを使ってタイマーやアラームもかけていました。親も忘れてしまうので、音が鳴ったら「あ、次はこれをする時間だね」と区切りをつけるんです。「次に鳴ったら遊びは終わりにして、外に行こうね」という感じです。小さい頃からやっていました。

――実際に続けてみて、どんな変化がありましたか?

以前から、ゲームとYouTubeは1日1時間と決めているんですが、いま息子たちは自分で1時間のアラームをかけて、鳴ったらサッとやめられるようになりました。それ以上やりたいとはあまり言いません。その時間内とはべつに、土曜や日曜の夜に家族4人でマリオカートをすることもありますが、それは家族として楽しむ時間。いまはもう、この時間になったらこれをする、時間になったら切り上げる、ということが身についていますから、どうしても決めたことをやりたくない日は臨機応変でいいと思っています。毎日、「この時間になったらこれをしなさい」と押し付けるのは無理ですから。

子どもの動線に合わせてものの配置を決める

――物の配置を決めることも、ルーティンにつながるのでしょうか?

そうですね。たとえば外に出るまでの動線のなかで、どこに何を置くかを細かく決めます。ランドセルはここ、上着はここ、というように。最初はできないので、「どこに置くんだっけ?」「ここに置くんだよ」と声を掛けます。ランドセルが違う場所に置かれていることもありますけど、一応、決まった置き場所があることは伝えているので、本人もどこに置くかは分かっています。小学生になると、分かっていても面倒でできないことがありますから、声をかけることはありますね。

リビングダイニングの一角にある息子たちの収納棚。無印良品の組み立て式のもので、ランドセルや学習教材の置き場にしている。使い方に合わせて、それぞれのものの定位置を決めておくことが集中力アップにもつながる。

――置き場所はどのように決めるのがよいのでしょうか?

家の間取りや動線に合わせて考えるのがよいと思います。たとえば、おむつ替えの場所をリビングの真ん中にしている方もいらっしゃいますが、リビングだといろいろな物が目に入って、子どもはおもちゃの方へ行きたくなってしまいます。将来のことまで考えたら、トイレの横におむつ替えの場所をつくると、自然に「トイレはここでするんだな」ということも身についていきます。上着も、リビングのなかより廊下に置いてあげた方が、遊びに気を取られず、出かけるときにさっと着られます。

――一度決めた方法が、うまくいかないこともありますか?

もちろん、あります。わが家の場合、上着は引っ掛ければいいと思ってフックを用意したんですが、子どもには引っ掛けるのが面倒だったみたいで、全然続きませんでした。それで箱を用意して、そこにバサッと入れられるようにしたら、そちらの方が合っていました。親としては上着や帽子をきれいに掛けたいと思うんですけど、子どもにとっては、お出かけ用の物をまとめて箱へ入れる方がやりやすかったんですね。観察して、やってみて、できなければまた環境を変える、ということだと思います。

環境設定をする4つの場所

――環境設定をする場所として、玄関、洗面所、子どもの作業スペース、おもちゃ収納の4か所を挙げていらっしゃいます。どんな工夫をされていますか? 

玄関は、靴を脱ぎ散らかさないように置く場所を決めて、シールなどで示すようにしました。右と左を間違えないように、右は赤、左は青というようにわかるようにして。兄弟それぞれを近くに置いたら、脱ぐタイミングが重なって肩がぶつかってケンカになったこともありました(笑)。それで少し間を空けるようにしたり。細かい調整は必要ですね。

洗面所では、「1番は手を洗う、2番はうがい、3番は手を拭く」というように、やることに順番をつけていました。「3番は何だっけ?」と聞くと、子どももゲーム感覚で思い出します。手洗いのように必ずしてほしいことは細かく伝えますが、それ以外は親が許容できる範囲でできれば、緩やかでいいと思います。

子どもの作業スペースは、マットを敷いて区切りをつけるとわかりやすいです。そのマットのある場所だけで遊ぶ、ここでおむつを替える、という感じです。折り紙やはさみを使う作業は、机と椅子がある場所でするという決め方もよいと思います。そのために、棚の近くに折り紙やはさみを置いておくと、すぐ作業に集中できます。

おもちゃ収納は、多くのお母さんが困っているところだと思います。片付けずに散らかしてしまうのを防ぐには、児童館のような方法が分かりやすいです。大きな箱に写真やシールを貼って、何を入れる箱なのか分かるようにするんです。ただ、細かく分けすぎると逆に片付けなくなるので、「電車」「ぬいぐるみ」というくらいの、ざっくりした収納がおすすめです。

――親が後ろ姿を見せることも大事だとおっしゃっていますね。

「片づけなさい」と言うだけでは片づかないので、やはり一緒に片づけて、「ここに置くんだよ」ということを伝えます。子どもは親のことをよく見ています。できないときは「ちょっと見ていて」と言って、まず私がやるところを見せて、それから「じゃあやってみて」や「一緒にやろう」と声を掛けます。

――最初からぴたりと方法が決まるわけではないんですね。

これはだめだったな、ということもあります。保育園で教えていたころの経験もありますが、家ではどうしたらいいかを子どもを観察しながらやってみて、できないなら次の方法に変えてみる。そこでようやく、お互いにうまくいく形が見つかるんだと思います。

発達段階に合った道具を使う

――現在の学習環境について教えてください。

長男が小学校に入学したときに、ゆくゆくは次男も使えるように、二人並んで使うデザインの学習机を購入しました。長男はいまでもその机で勉強していますが、次男は結局、ダイニングテーブルの方がいいらしく、学習机の半分はプリンターなどの機材置き場になってます(笑)。

長男の学習スペース。机の上とすぐ脇の棚に教材を置いて、取り出しやすく。椅子は豊橋木工の「アップライトチェア」を使っている。

――ご兄弟で、勉強の仕方も違うんですね。

違いますね。長男はいま中学受験の時期で、場合によっては夫が勉強を見ることもありますが、基本的にひとりで勉強するタイプです。次男は勉強しているときに、側で「見ていて」と言うんです。何かを教えてほしいわけではなくて、側にいてほしいらしい。わたしもずっと見ているだけだと飽きるので、途中で本を読もうとすると「読まないで」と言われたりします。家事に立つと「どこへ行くの」と聞かれるので、そういうときは「これが終わったら戻ってくるね」と伝えています。性格によって合う環境も、関わり方も違ってくると思います。

――そういう違いは、学校での勉強が始まってからでないとわからないものですね。

ですから、学習机は何がなんでも新入学に合わせて急いで買わなくてもいいと思います。まずリビングテーブルでやってみて、集中できないようなら学習机を検討してもいいのではないでしょうか。金額もスペースも大きな買い物ですし、先に子どもの様子を見る方がいいと思います。棚は無印良品の組み立て式のもので、子どもがまだ小さいときに買いました。最初は低く使って、小学校に上がる頃には上へ積み重ねられるものを選びました。子どもが大きくなったときに、どう形を変えて使えるかまで考えておくといいと思います。

――椅子はご兄弟ともに、当ウェブサイトでも扱っている「アップライトチェア」を使われているのですね。

子どもが自分で坐りやすく、足がきちんとつくことを大事にして選びました。小さい頃に使っていた椅子が、5歳くらいになると坐りにくそうだったので、ネットでいろいろ調べていたら「アップライトチェア」を見つけて、いいかもと思いました。モノ・モノ(当オンラインショップの実店舗)で実物が見られることがわかったので、実際に店舗で坐ってみて買い替えました。大人と同じ食卓で無理なく食べられて、大きくなっても使えるものがよかった。一脚の値段は安くはないですが、何度も買い替えるものではないですし、ある意味一生使えます。今は、次男の学習机で使用しなかった椅子を私が使っています。

ダイニングテーブルとその周辺が、次男の学習スペース。「アップライトチェア」は、食卓でも愛用。成長に合わせて座面や足置きの高さを調整できるので、無理のない姿勢で勉強にも食事にも向き合えるところが気に入っている。

――勉強するときに必要な道具はどこに置いていますか?

それぞれ、勉強する場所の近くに置いています。必要な道具を近くに置いておくことは、とても大事です。すぐ取りかかれますからね。長男の場合は学習机周りに置いていますし、次男はダイニングテーブルの近くの棚に置いています。それと、やる気になっているときに、鉛筆や消しゴムがない!ということにならないように、文具のストックも切らさないように注意しています。

ダイニングテーブルの近くに置いているキャスター付きのワゴン収納には、次男の学習用の鉛筆や消しゴムなどの文房具をセット。図書館で借りてきた本も一番上に置いて、すぐ手に取れるようにしている。返し忘れも防げる。

――教材はどうしていますか?

教材の置き場所も同様に、それぞれ近くに置いています。教科ごとに、算数、国語、理科、社会で色分けして、色を見れば何の教科か分かるように整理しています。ノートや塾のプリントなども同じ色分けにしてファイルしています。子どもだけでなく、親も「あれ、どこに行った?」となるので、分かりやすい方がいいんです。最初だけちょっと手間ですが、一度ファイルをつくってしまえば、親も子どもも使いやすいですよ。あと、図書館で借りてきた本は、専用のワゴンにまとめて、目につくようにやはりダイニングテーブルの近くに置いています。

教科ごとの色分けは、塾用のノートにも。
ファイルも同様に色分けして、兄弟それぞれの教材の棚に置いている。棚の左は神成さんの著書(詳細は文末参照)。

――いま息子さんたちをご覧になって、どのように感じていますか?

勉強については、自分で「今日はここまでやる」と決めて机に向かっています。ふと気づくと、「これはどういう意味だっけ」と図鑑を開いていたりして、何かを知りたい、やってみたいという気持ちは自然に育ってきているように思います。夏休みの宿題なども、8月後半になってたくさん残っていることもありますけど、それも失敗の経験として大事だと思うので、わたしはあまりうるさく言いません。「終わってないんじゃない?」とは言いますけど、本人が「何とかなるよ」と言うなら、それを信じます。自分で段取りをつけることは、「手洗いの1、2、3」と同じで、小さい頃からの積み重ねでできていますから。

――さまざまなことを積み重ねてきて、いまがあるのですね。

子どもをよく観察して、その子が続けられる方法に環境を変えていく。それが一番大切だと思います。

著書の紹介
保育園児のためのおうちモンテッソーリ
保育園児のためのおうちモンテッソーリ
著者:神成美輝/朝日新聞出版/装丁:B5判・128ページ/2026

仕事に家事にと日々の慌ただしさに追われながら、子育てに悩むすべての親に贈る、子どもと親の毎日が楽になる実用書。「環境を整えれば子どもは自分から動く」を実現するために、年齢に合わせた具体的な方法や考え方を詳解する。環境を整えるといった場合の「環境」は、「もの」や「場所」だけでなく、子どもの周りにいる「大人」も環境の一部という、ドキリとするアドバイスも。大人がわが身を振り返るきっかけにもなる指南書。

朝日新聞出版公式サイト

聞き手の紹介

佐野由佳
佐野由佳さの・ゆか
編集兼ライター

1986年工作社入社。『室内』編集部を経て2005年よりフリーランスのライターとして独立。建築、住まい、ものをつくる現場を中心に、時々ジャンルを超えていまを生きる人をインタビュー。2010〜2020年飛騨産業広報誌『飛騨』編集委員、百周年社史編纂に参加。2016年『クロワッサン特別編集 認知症を生きる』。2022〜2025年建築誌『コンフォルト』で「寄り道!ニッポン家具産業史」を連載。長谷工グループのWebメディア『すむむ。』にて「あの人の住み替え」不定期連載中。ほか、『暮しの手帖』『BRUTUS』など雑誌を中心に活動。大衆演劇ナビ共同主宰。

子供の姿勢を守る椅子・アップライトチェア(ウォールナット)

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子供の姿勢を守る椅子・アップライトチェア(ロータイプ)

こちらのロータイプは高さ60~66cmのテーブルと組み合わせて使えます。姿勢保持効果は標準モデルと同じです。

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