秋岡芳夫が1940年代に手がけた、ロクロ玩具のデザイン画を立体復元
モノ・モノ創設者の秋岡芳夫がデザインした創作こけしです。宮城県の鳴子こけしの職人、早坂利成さんが木地製作から彩色まで、一点一点手作業で製作しています。
見るだけで心が和む、ユーモラスなこけしをデザインしたのは、工業デザイナーの秋岡芳夫。「工業デザイナーがなぜ、こけしのデザインを?」と思われるかもしれません。じつは秋岡芳夫は、戦争から復員した直後、童画家や玩具作りを志していた時期がありました。
秋岡氏は当時の自分自身を次のように述懐しています(美術手帖・1965年4月号増刊より抜粋)。
「戦争が東京に残してくれたのは、うその様に澄み切った青空だけだった。そして終戦という折目が私に与えてくれたのは、その青く広い空に雲のように自由に夢を描いて見ることだった。理由もなく私は戦前からの職場にもどるこをと止め、なにはともあれその青い空に浮かんでみた。そして夢想した。初山滋のような絵描きになろう。オモチャを作る人になろうと」
「子供達に関係ある仕事に取組むことで、戦争のいまわしい想出からも抜け出せるような気もしたし、子供・童話・絵本・玩具などと言う言葉を口にすること、もうそのことだけで十分平和で平等で自由で未来が明るいような気がしたのを覚えている」
1946年、商工省工芸指導所・玩具統制組合の研究班で活動していた秋岡芳夫は、ロクロ技術を使った木製玩具のデザインを検討し、80点余りのデッサンを残しました。当時、玩具はぜいたく品であり、高い税金が課せられていたため、本格的な玩具を販売することが難しく、残念ながら製品化されることはありませんでした。
半世紀の月日を経て、それらが復元されたのは、鳴子こけしの職人、早坂利成さんとドンタク玩具社の尽力によります。同社は2015年に岡山で創業。全国の腕利きの職人と組み、デザイン性にすぐれた創作こけしを提案しています。
原画の雰囲気を忠実に再現するため、絵の具までこだわる
「ドンタク玩具社は早坂さんとの出会いではじまったといっても過言ではありません」と同社の軸原美智子さんはいいます。
「早坂さんはこけし工人の中でも造形のセンスが大変すぐれていて、私の友人が着ていたワンピースのこけし柄を見て、その記憶だけで創作こけしを見る間に作ってしまう、そんな人です。技術力がずば抜けている一方、伝統も重んじていて、ろくろも電動式ではなく、足踏み式を使い続けている数少ない作り手です」
軸原さんは目黒区美術館で開催された秋岡芳夫の回顧展の図録で「ロクロノタメノガングイショー」の存在を知りました。「その自由でおおらかなデザインに感銘を受けて、さっそく早坂さんに製作を打診した」そうです。
「早坂さんは秋岡芳夫をとても尊敬されていて、秋岡さんと一緒に活動していた木工デザイナーの時松辰夫さんのロクロ講習を受けたことも過去にあったとそうで、すぐに快諾してもらえました。」
デザイン画の中からどの人形を立体化するか、どのくらいのサイズに仕立てるかなど、詳細は早坂さんに一任し、待つこと約1年。8つの試作品が完成したそうです。
「難易度がかなり高い2作品はあきらめ、最終的に5作品を商品化することにしました。早坂さんがふだん作っている伝統こけしと違い、可動部分や左右非対称の部品があるので、早坂さんの技術力をもってしても、ずいぶん苦労されたようです」
本体の色にもご注目。デザイン画の雰囲気に近づけるため、試行錯誤をくり返して染料(絵の具)の配合を決めたそうです。
当店で販売するのは全7作品。本ページでは青いハットが特徴のNo.7を販売しています。ドンタク玩具社オリジナルの箱に入れてお届けします。限定品のため、次回入荷時期は未定です。
早坂利成(はやさか・としなり)
こけし職人・伝統工芸士
1960年宮城県生まれ。こけしの町、鳴子温泉で育つ。高校卒業後、こけし工人の父、早坂隆に師事。伝統こけしのみならず、クリスマスツリー(重ね独楽)や、招き猫、マトリョーシカなど、創造的な木地玩具も製作。踏みロクロの数少ない継承者でもあり、各地で精力的に実演を行っている。
- 作者
- 秋岡芳夫+早坂利成
- 素材
- 天然木(ミズキ)
- サイズ
- 直径6cm×高さ19cm
- 重量
- 約245g
- 製造国
- 日本
- 注意事項
- ※天然素材の宿命として木目や色合いが一点一点異なります。
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