8人の巨匠に取材した、ジャパニーズモダンの核心に迫る決定版
日本の椅子デザインをまとめた名著『日本の椅子』を、大幅増補・改訂した決定版が登場しました。本書は、ジャパニーズモダンを象徴する椅子とデザイナーに焦点をあて、日本と海外を横断する“100年のデザイン史”を一望できるほか、日本を代表する8名のデザイナーに取材し、その言葉と制作の舞台裏を臨場感とともに収録しました。
名作椅子の誕生背景、時代ごとの潮流が語られ、モノ(椅子)と人(デザイナー)を歴史の中で捉え直す視点は、往年のファンはもちろん、若い世代の読者、建築・デザイン愛好家、そして幅広い「椅子好き」にも訴求する一冊です。豊口克平の「トヨさんの椅子」や柳宗理の「柳三角スツール」、松村勝男の「ラタンの肘付椅子」も収録されています。また、共著者の笠原嘉人は「スリムだ円テーブル」や「角のないテーブル」のデザインを手がけています。
著者からのメッセージ(本書まえがきの一部を抜粋)
本書は2006年にデンマーク・コペンハーゲンの各所で約4ヵ月間に渡って開催された日本のインテリアデザイン展 「Japanese Cool 1」 (DDC (Danish Design Center. 現在は活動停止) とトラフォルトミュージアム) と「Japanese Cool 2」 コペンハーゲン インター ナショナル ファニチャー フェア会場)と同時にバイリンガルで出版された「日本の椅子」の増補改訂版となります。旧をバイリンガルとしたのは、日本の家具デザインを世界に発信することが前提にあったためで、このことは「あとがき」で触れています。
今回復刊するにあたり、武蔵野美術大学の教え子でもあるデザイナーの笠原嘉人君による新たな章を加えました。1980年代以降、2025年の今日までのあいだ、「日本の椅子」の8人の作品を超えるような、ロングライフデザインと呼ぶにふさわしい椅子が存在しないのはなぜか、その理由を探るために、8人の建築デザイナーがその名作を生み出すに至った背景〜当時の社会情勢、人と人のつながり、学びや思想の継承、技術との連携などを、時代と環境の推移と併せて論考したものです。あらためて日本の先人達の努力のデザインを浮かび上がらせ、それが若い世代のデザイナー達に伝わってくれると良いと考えています。
いままでは系統立てて紹介するチャンスがなく、海外には知られてこなかった日本の家具デザインですが、本書が知られざる日本の名作椅子のいくつかをご紹介する一助となり、またそれらの生まれた背景を知ることでより深い理解を得ていただければ、これほどうれしいことはありません。
武蔵野美術大学名誉教授 島崎信
- 著者
- 島崎信、笠原嘉人
- 発行元
- グラフィック社
- サイズ・ページ数
- 182mm×257mm・184ページ
- 発行年
- 2025年12月