三澤康彦『「木の住まい」をデザインする 』
3,080円(税280円)
プロローグ
独立してから木造の世界にどっぷりと浸かってきた。設計事務所としての業務の範疇を超え、木造の発注や木質材料の開発、そして木造を学べる場としてのMOKスクールの開校と、仕事は深く広く、多岐にわたってきた。
私はセミナーやタッフたちに向かって常々言っていることがある。「現在の棟梁としての設計者になることが、食える設計者になれる道である」と。設計側として施工側を眺めているだけでは、自然素材を多用した精度ある一品一生産の「木の住まい」は完成をみない。1985年に自邸をつくった時は、まだ木材の品質についての認識が、あいまいのまま施工側と取り組んでいたという反省がある。以後、林業側と一緒になって木材を直接段取りすることを常としてきた。日本の山々を駆け巡り、各地で製材のキーパーソンとの出会いがあった。
私たちは、常に住まい手に代わって材木を発注している。そこでの判断は、木材の色目、年輪の緻密さ、価格がセットとなり、はじめて品質と呼んでいる。木拾い、木くばり、木工職への仕口・継手の指示も常に私たちの役割である。
「木の住まい」をデザインする。これはただ美しい木造住宅をつくることだけに留まらない。より丈夫で長持ちのする構造体、生活、品質、価格、温熱環境、生産システムに深く関わりながらものづくりをしなければ、これからの木造設計者の未来はない。
三澤康彦
目次
- 日本の木で家を造るということ
- 木造住宅はCO2の削減に貢献している
- 木材は日本の中で量的にまかなえる 木の構造と性質
- 木材の含水率と乾燥
- 吉野は日本の植物文化の源
- 原木の値段と製品の値段
- 木材は野菜と比べて驚くほど安い
- 木材の性質を知り、適材適所に使う
- 徳島県木頭村の林業
- 最後の責任は設計者と住まい手にある
- 多様な信州の木材
- 能登のヒバは植林
- 日田の挿し木林業
- 山と都市とを繋ぐチャンネルをつくる
- 設計者は木を吟味できる「現在の棟梁」たれ
- [寄稿]山と都市とのネットワークで作る家づくり 和田善行
- 伝統構法の合理化への試行
- 「千里私たちの家」から「Jパネルハウス」への道のり 三澤文子
- 私たちの「木の家」づくり
- 千里私たちの家 1985
- 「千里私たちの家」の変遷 生活・仕事場としての木の住まい
- わんぱく王国管理棟 1995
- こだわりの設計からフォルクス「木の家」へ
- フォルクス「木の家」のシステム
- 木の家づくり展示館 1996
- Jパネルと「ユニクロ」木の住まい版
- Jパネルハウス(秦野の家) 2001
- [寄稿]構造家からみた三澤康彦の仕事 山辺豊彦
- 「木の住まい」をデザインする
- 山王町の家 2002
- 御影のコートハウス 2007
- Jパネル落とし込み構法と住宅のデザイン
- 胡桃山荘 2011
- 姉妹の家 2015
- 柿の木荘 2017
- 春風の家 2018
- [寄稿]用強美の建築 三澤康彦を送る 泉幸甫
- 三澤康彦の仕事 1979-2019
- あとがき
- 著者
- 三澤康彦
- 発行元
- 建築資料研究社
- サイズ・ページ数
- B5判・143ページ
- 発行年
- 2019年05月5日
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