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COLUMN

椅子とテーブルを低くすると食事も仕事も楽しくなる

食事の時間こそ家族が集まるだんらんのときなのに、今のダイニングはどうも長く座っていられない。その原因のひとつは家具のサイズにあるのです。テーブルと椅子を思い切って低くして、長居できる部屋づくりをしてみませんか。 (文・大山直美、語り・秋岡芳夫)

男の椅子

ダイニングテーブルで、
家族みんながくつろげますか?

食事どきこそ、家族だんらんのとき。これはだれも異論のないところですが、では今のダイニングセットは長くくつろぐにふさわしい家具といえるでしょうか。ダイニングチェアじゃ座り心地が悪いからとソファに移動、あげくの果てには床に寝ころんでテレビを見ている、なんて人もいるのでは?

あの落ち着きの悪い感じの理由のひとつは椅子とテーブルの高さにある、と長年にわたって主張し、研究を重ねているのが、工業デザイナーの秋岡芳夫さん。

テーブルの高さの違い

和食は器を手で持ち、やわらかい料理を箸でつまみあげて食べる。このため食卓は低いほど食べやすい。一方、洋食はナイフ、フォークを使い、肉料理などを刻みながら食べるため、食卓は高いほうが使いやすい。

秋岡さんによれば、日本で売られている既製品の椅子やテーブルの大半は、靴をはいて使う寸法に従って作られているとのこと。日本人の体格が西洋人に近づいたとはいえ、これではオフィスはともかく、家庭では高すぎるのは当然。

また、平たい皿から直接スプーンやフォークでとって食べるのでなく、深めの器を手に持って食べるうえ、食卓に置いた鍋をつつく鍋料理も楽しむという日本人の食習慣からすれば、テーブルの高さは今よりずっと低くすべき、つまりテーブルは椅子よりさらに高さを大幅に削る必要がある、と秋岡さんは言います。

これから売り場でダイニングセットを選ぶ人は、まず靴を脱いで腰かけてみること。自分にフィットする家具を選ぶものさし、それは自分の体なのですから。言われてみれば、わが家の椅子やテーブルは高すぎる、という人には、勇気を出して自分の切り詰める方法もおすすめします。

背の高い人も低い人も
楽に座れる椅子の高さ

そもそも、夫と妻と子どもでは脚の長さが違うのだから、当然ふさわしい椅子の高さだって違うはず。いったいだれに合わせて選べばいいの? とお悩みのかたも多いでしょう。売り場で選ぶ際には、ついスポンサーのお父さんの意見を尊重してしまい、あとで後悔するといった失敗も起こりがち。

「椅子は最も使用頻度の高い人間に合わせるべきであり、夫婦二人なら小さいほう、つまりたいていは女性に合わせればうまくいく」

かく言う秋岡さんが長年にわたり、3世代同居の家族全員に座ってもらい、研究に研究を重ねてきた結果割り出した、家族みんなに合った高さは、テーブルが61センチ、椅子の座面が36センチ。身長150センチくらいの人にぴったりの寸法ですが、これなら子どもからおばあさんまで楽に座れるし、鍋料理もOKだそうです。

でも、これでは脚が長い人は座り心地が悪いのでは、とご心配の向きもあるでしょうが、長身の男性でも充分フィットしうることは180センチを超える娘婿で実験ずみ、と秋岡さん。なぜなら、足を少し前に投げ出せば大丈夫だし、もっとくつろぎたいときは座面にあぐらをかくといったぐあいに、床の足の裏がつきさえすれば、臨機応変に椅子を体になじませることができるのです。

ただし、その際、椅子には長い腿(もも)を支えるために、ある程度奥行きがあるもの、かたやテーブルは、ひざがつかえる引き出しや幕板(天板を支える細長い板)がないものを選ぶことが肝心です。

低座の椅子(36cm)とテーブルの高さ(61cm)

テーブル天板から椅子の座面までの距離を差尺という。モノ・モノの低座ダイニングは、この差尺を約25cmに設定してある。

テーブルを低くすると、
食事にも勉強にも作業にもオールマイティに使える

秋岡さんのすすめに従って、椅子を少し低く、かつテーブルをうんと低くすると、ほかにもいいことがいろいろあります。

というのも、この高さなら食事だけでなく、座ったままアイロンかけだってできますし、子どもが宿題をするのにも好都合。低いとお客さまもくつろげるようです。

考えてみれば私たちは、高すぎて落ち着かないダイニングテーブル、低すぎて食事ができない応接セットのティーテーブル、ろくに使いもしない勉強机、と家の中に中途半端なテーブルを持ち込みすぎて、部屋をいっそう狭くしているのではないでしょうか。

低くてくつろげる万能テーブルがLDKの真ん中に一つあれば充分。しかもこのテーブル、高さが抑えてあるので天井が高く見え、部屋もより広く感じられます。

さらに、テーブルを離れて床にごろりという人がいた場合、テーブルが高いと、どうも目線がうまく合わず、会話がはずまないものですが、低めのテーブルならお互いの目線も近づいて、しっくり。床の生活にも違和感のない高さです。

椅子の生活の歴史が浅く、どうしても床に座りたくなる日本人ですが、かといって長く座っていると足はしびれるわ、腰は痛いわ、やっぱり椅子が恋しくなってしまうのが悲しい現代人の習性。低めのテーブルはそんな人向けの「現代版卓袱(ちゃぶ)台」なのかもしれません。

低座の椅子とテーブル

写真の丸テーブルは廃番モデルです。ご希望の方は特注製作で承ります。

出典:『オレンジページ』(オレンジページ刊)1994年12月17日号・P72~74 

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