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COLUMN

椅子とテーブルを低くすると食事も仕事も楽しくなる

食事の時間こそ家族が集まるだんらんのときなのに、今のダイニングはどうも長く座っていられない。その原因のひとつは家具のサイズにあるのです。テーブルと椅子を思い切って低くして、長居できる部屋づくりをしてみませんか。
 (文・大山直美、画・小山尚子、語り・秋岡芳夫)

出典:『オレンジページ』(オレンジページ刊)1994年12月17日号・P72~74 

ダイニングテーブルで、
家族みんながくつろげますか?

食事どきこそ、家族だんらんのとき。これはだれも異論のないところですが、では今のダイニングセットは長くくつろぐにふさわしい家具といえるでしょうか。ダイニングチェアじゃ座り心地が悪いからとソファに移動、あげくの果てには床に寝ころんでテレビを見ている、なんて人もいるのでは?

あの落ち着きの悪い感じの理由のひとつは椅子とテーブルの高さにある、と長年にわたって主張し、研究を重ねているのが、工業デザイナーの秋岡芳夫さん。

テーブルの高さ

男性サイズの椅子に女性が座ると…
座面高さ42cm前後の椅子は身長170cm台に適した、いわば男性サイズ。女性やお年寄りが座ると、かかとが浮き、足がしびれやすくなる。座面高さ36cm前後の椅子なら、両足をつけて楽に座れる。

秋岡さんによれば、日本で売られている既製品の椅子やテーブルの大半は、靴をはいて使う寸法に従って作られているとのこと。日本人の体格が西洋人に近づいたとはいえ、これではオフィスはともかく、家庭では高すぎるのは当然。

また、平たい皿から直接スプーンやフォークでとって食べるのでなく、深めの器を手に持って食べるうえ、食卓に置いた鍋をつつく鍋料理も楽しむという日本人の食習慣からすれば、テーブルの高さは今よりずっと低くすべき、つまりテーブルは椅子よりさらに高さを大幅に削る必要がある、と秋岡さんは言います。

これから売り場でダイニングセットを選ぶ人は、まず靴を脱いで腰かけてみること。自分にフィットする家具を選ぶものさし、それは自分の体なのですから。言われてみれば、わが家の椅子やテーブルは高すぎる、という人には、勇気を出して自分の切り詰める方法もおすすめします。

背の高い人も低い人も
楽に座れる椅子の高さ

そもそも、夫と妻と子どもでは脚の長さが違うのだから、当然ふさわしい椅子の高さだって違うはず。いったいだれに合わせて選べばいいの? とお悩みのかたも多いでしょう。売り場で選ぶ際には、ついスポンサーのお父さんの意見を尊重してしまい、あとで後悔するといった失敗も起こりがち。

座面の奥行きが肝心

脚の長い人が低い椅子に座っても快適な理由
低い椅子だと脚の長い人の座り心地が悪いのでは……その心配はご無用。足を少し前に投げ出したり、くつろぐ時には座面にあぐらをかいたりと、臨機応変に姿勢を変えて、自然に調節できます。それにはある程度の座面の奥行きが必要。

「椅子は最も使用頻度の高い人間に合わせるべきであり、夫婦二人なら小さいほう、つまりたいていは女性に合わせればうまくいく」

かく言う秋岡さんが長年にわたり、3世代同居の家族全員に座ってもらい、研究に研究を重ねてきた結果割り出した、家族みんなに合った高さは、テーブルが61センチ、椅子の座面が36センチ。身長150センチくらいの人にぴったりの寸法ですが、これなら子どもからおばあさんまで楽に座れるし、鍋料理もOKだそうです。

でも、これでは脚が長い人は座り心地が悪いのでは、とご心配の向きもあるでしょうが、長身の男性でも充分フィットしうることは180センチを超える娘婿で実験ずみ、と秋岡さん。なぜなら、足を少し前に投げ出せば大丈夫だし、もっとくつろぎたいときは座面にあぐらをかくといったぐあいに、床の足の裏がつきさえすれば、臨機応変に椅子を体になじませることができるのです。

ただし、その際、椅子には長い腿(もも)を支えるために、ある程度奥行きがあるもの、かたやテーブルは、ひざがつかえる引き出しや幕板(天板を支える細長い板)がないものを選ぶことが肝心です。

洋食に適したテーブルの高さ

ナイフ・フォークを使う
洋食に適した
テーブルの高さ

肉食中心の欧米では、器を手に持たず、ナイフ、フォークを使って食事する。テーブルの上で固い肉を切ったり、スプーンでスープをすくったりするには、テーブルは高いほうが使いやすい。

和食に適したテーブルの高さ

お椀・箸を使う
和食に適した
テーブルの高さ

日本人はかつて床に座って食事をしていたため、器を手で持ち上げ、箸を使って食事する習慣がある。このためテーブルは低いほうが食べやすい。また、鍋料理も取り分けしやすい。

テーブルを低くすると、
食事にも勉強にも作業にも
オールマイティに使える

秋岡さんのすすめに従って、椅子を少し低く、かつテーブルをうんと低くすると、ほかにもいいことがいろいろあります。

というのも、この高さなら食事だけでなく、座ったままアイロンかけだってできますし、子どもが宿題をするのにも好都合。低いとお客さまもくつろげるようです。

低座ダイニングは、一般的な椅子より座面高さが6〜7cm低いので、床に座った人と椅子に座った人の目線の格差が抑えられる。食堂と和室が隣り合った間取りでも違和感が少ない。

考えてみれば私たちは、高すぎて落ち着かないダイニングテーブル、低すぎて食事ができない応接セットのティーテーブル、ろくに使いもしない勉強机、と家の中に中途半端なテーブルを持ち込みすぎて、部屋をいっそう狭くしているのではないでしょうか。

低くてくつろげる万能テーブルがLDKの真ん中に一つあれば充分。しかもこのテーブル、高さが抑えてあるので天井が高く見え、部屋もより広く感じられます。

さらに、テーブルを離れて床にごろりという人がいた場合、テーブルが高いと、どうも目線がうまく合わず、会話がはずまないものですが、低めのテーブルならお互いの目線も近づいて、しっくり。床の生活にも違和感のない高さです。

椅子の生活の歴史が浅く、どうしても床に座りたくなる日本人ですが、かといって長く座っていると足はしびれるわ、腰は痛いわ、やっぱり椅子が恋しくなってしまうのが悲しい現代人の習性。低めのテーブルはそんな人向けの「現代版卓袱(ちゃぶ)台」なのかもしれません。

家具メーカーのカタログの中から
低めのダイニングセットを探してみたら‥‥‥

 

低めの椅子とテーブルのよさはわかったけれど、オーダーメイドなんて贅沢だし、手ごろな値段の既製品のなかにそんな寸法の家具はあるのかしら、とご心配の読者のために、家具メーカーのカタログのなかから、低めのダイニングセットを探してみました。

  

率直に言って、秋岡さんが推奨する高さ36センチの椅子に61センチのテーブル、という組み合わせはほとんど見当たりませんでした(1994年時点の情報です。現在はいくつかのメーカーが製造しています)。ただし、高さ40センチ未満の椅子、65〜68センチのテーブルが増えてきていることは確か。写真で紹介したのはその一部です。

  

さほど小柄でない夫婦なら、これでも十分くつろげますし、デパートや家具店によっては、脚を切り詰めてくれるところもあります。
 また、椅子とテーブルは必ずしもセットで買わなくてもOK。DIY店で天板と脚を自分で組み合わせるセミオーダーテーブルを買って、低めの椅子を組み合わせるというのも一手です。 

低座の椅子とテーブル

写真の丸テーブルは廃番モデルです。ご希望の方は特注製作で承ります。

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